プリーストリー「夜の来訪者」

ある裕福な家庭である夜。娘の婚約パーティが行われているところに、警部と名乗る男が「今日、ある若い女性が消毒剤の飲んで自殺しました」とやってくる。当初は、全く自分たちとは関係ないと思われた、若い女性についての話を聞いているうちに、家族のそれぞれが、少なからず関係を持っていることが明らかになってくる。はたしてその若い女性を自死においやった原因とは?
そんな感じでどんどん、家族と若い女性との関係が明らかになっていくシーンは、なかなかの緊張感で非常に読ませる。この本は戯曲であるため、基本的には情景の描写に乏しい。しかしながら、少ない情報から読者は情景を想像するしかないために、地の文があるよりは、より大きく想像力を働かせることができるのではないかと思う。
オチは途中から予想可能であるが、やはりここに書くべきではないと思うので、書かない。するっと読めて、ギクッとさせられるなかなかの高著ではないだろうか。
時代的・政治的な背景がわかる当時・当地の人たちには、かなり強烈な印象を残した作家なのだろうと想像した。